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ちなみに「自然史」とは、I『K』によると「人間以前・人間以外の自然の発展は、人間を生みだす前提条件として、それに歴史的意味を与えようとする考え方にもとづく概念」である。
ところが、どういうわけか『K』では、「自然の発展に歴史的意味づけを与えたもの。 現代ではとくに進化論的観点から論じられることが多い」となっていて、「人間」が後退している。
ここには人間抜きの話は語られていない。 したがって、みなさまには、『K』の意味で解釈していただいたほうがよいかとも思う。
実は、私が生まれて初めて読んだ英語で書かれた本、正確に言うと、読もうと試みた本は、中学校の図書室から借りてきたP・D・Kの『微生物の狩人』であった。 戦後間もない草深い片田舎の中学校にさえあったくらい、その本は有名であったらしい。
もちろん当時の私の知識では読めるわけがなく、またろくな辞書もなかったので、二、三ページより先へ読み進んだという記憶はない。 ともかくいまでもその淡い色のきれいな表紙だけは鮮明に覚えている。

二つの研究所だけが保有していると考えること自体が非現実的であり、あまりに楽観主義ではないかと思う。 国家機関による保有だけが保有ではないはずである。
人間、とくに科学者は好奇心が強い。 世界中の研究所あるいは研究者が、期限を切っていっせいに公式に天然痘ウイルス株の廃棄に応じたことは確かな事実であろう。
しかし科学者個人の問題となると、それはまた別であると私は思う。 天然痘ウイルス株が世界中にふんだんにあるときは、WHO勧告に従ってどの研究所もどんどん廃棄していったであろう。
しかし、廃棄が進んでゆき、地球上での存在がまれになってゆくほど、廃棄期限に近づけば近づくほど、人間としての科学者が勧告に従わなくなったこともまた可能性として考えられるのではないか。 すなわち、問題は個人的なものになり、個人の科学への探求心だけで行動する者や、「昆虫少年」に帰ってコレクター精神を発揮する者さえありえたのではないか。
また、地球上に存在しなくなるとわかっている「生物」を、みすみす棄てることができない科学者がいてもおかしくないであろう。 したがって、いまでも世界のどこかで誰かが、悪意からではなく極秘に天然痘ウィルス株を保管している可能性がある、と私は危倶している。

その意味からも、公的研究所での保有全廃は危険なことではないかと私は思う。

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